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2007年06月19日

『もしもし、運命の人ですか。』

恋愛テーマに跳ねる魂
 時々、無性にエッセイを読みたくなることがある。何かの知識を得るためではなく、物語にひたる目的でもなく、気楽に読めて魂が跳ねるような、そんな極上のエッセイに出会いたい。

 しかし、そう簡単には見つからない。良いエッセイを書くことは、どうやらとても難しいことらしい。ユニークさは欲しいが、独善的だと心が離れる。堅苦しいのは嫌だが、上っ滑りのおふざけばかりでも白けてしまう。ユーモアにあふれる文章の行間から、きらりと光る叡智(えいち)と、ユニークな個性がほのかに伝わって来て欲しい。そんな贅沢(ぜいたく)な願いがエッセイ読みの胸にはある。

 『もしもし、運命の人ですか。』に出会って小躍りした。面白い。抜群に読ませる。著者の穂村弘さんは歌人。評者と同じ年の生まれ。同じ時代の空気を吸ってきたことによる共感はもちろんあるが、それだけではない。

 言葉の選択やリズムが良い。一筋縄ではいかない着想の妙がある。見なれた日常に根ざしているようでいて、時に思いもかけぬ跳躍がある。デートしている女の子の携帯に「ワイルド」な男から「今、東名を歩いてる」と電話が入る。なぜ高速道路をこんな夜更けに歩いているのか、と思案しているうちに、女の子は「ちょっと行って来る」と席を立ってしまう。そんなエピソードから「ワイルドな男」について考察する「理想の男性像」など秀逸である。いやお見事。まいりました。

 初出は雑誌の連載。主たるテーマは、恋愛である。誰もが「プレイヤー」であるこの「種目」を巡って、穂村さんはまるで魔術師のように面白い話を次々と展開する。

 日常を描きながら異界がかいま見える。言葉の宇宙の中に浸っている中で出会う忘れがたい感触。古今和歌集の序に「やまとうたは人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれり」と書いた紀貫之のことを思い出す。
穂村弘
出版社:メディアファクトリー
発行:2007年3月
ISBN:9784840118163
価格:¥1365 (本体¥1300+税)

読売新聞



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